
雨上がりの午後。
ガラス戸を開けて入ってきたのは、アミさん(仮)。
「駅の広告、つい見ちゃって。なんだか胸がザワザワして…」と小さく笑いました。
さっきまで、脱毛サロンのポスターの前で足が止まり、
横では彼がスマホの画面に夢中。
“今の私、何か足りてないのかな?”
——そんな声が、心の奥でかすかに鳴ったそうです。
ベッドに横になって、まずは呼吸から。
吸う息で肩が少し上がって、吐く息でふわっと落ちる。
私はアミさんの手にそっとタオルを重ね、ゆっくり数えます。
「1、2、3……はい、胸に手。今の鼓動、わかりますか?」
少し沈黙があって、アミさんがうなずきました。
「SNS見てると、誰かの“正解”に追いかけられてる気がして」
その気持ち、よくわかります。
人の心は、他人を見るようにできています。
だから比べちゃうのは自然なこと。
でも、比べる方向を変えることは、いつでもできます。
私は小さなカードを渡しました。そこには3行だけ。
- 深呼吸を3回(スマホは伏せる)
- 今日の豊かさを3つ声に出す
例:温かいお茶/雨上がりの匂い/屋根がある安心
- ゆっくり言う:「足る→巡る。」
「たったこれだけ?」
「はい。外の規格から一度だけ降りて、“今あるもの”に光を当てる練習です。」
施術が進むにつれて、手の温度が体に広がり、呼吸が深くなっていきます。
アミさんの表情が、ほどけていくのがわかりました。
「さっきの広告のこと、もう遠くに感じます」
「よかった。美しさは“誰かの正解”に合わせることじゃなくて、
自分に戻るときに出てくる質感なんですよ」
最後に、もうひとつだけ。
鏡の前でつぶやく言葉をお渡ししました。
標準=今の私。足すか引くかは、私が決める。
帰り際、アミさんは笑って言いました。
「次にザワッとしたら、まず“足る→巡る”をやってみます」
その軽さこそ、体が思い出した自分の基準。
おうちでできる“1分だけ”
- 30秒:深呼吸3回+胸に手
- 20秒:今日の豊かさ×3を声に出す
- 10秒:**「足る→巡る。」**と宣言
比べるのをやめると、豊かさは静かに戻ってきます。
あなたのペースで大丈夫。
いつでもここで、呼吸を整えに来てください。
施術の前後にこのワークを一緒にすると、身体はもっとやわらかくほどけます。